スナップアップ投資顧問のレポートや日ごろの投資実践で掴んだ「割安な成長株を見つける方法」について解説します。成長株への長期投資といえば、アメリカの投資家ウォーレン・バフェットが有名です。その特徴やスナップアップの投資法の共通点、違いなどについて考えます。

バフェットは成長企業に長期投資

アメリカのウォーレン・バフェットは世界的に有名な投資家で、株から得る収益で世界2位の富豪になった人ですね。「世界最高の投資家」とも評されています。

バフェットのポートフォリオ

<バークシャーの米有力企業の株式大量保有の例>
銘柄 業種 保有する株の時価
ウェルズ・ファーゴ 銀行 265億ドル
コカ・コーラ 飲料 168億ドル
アメリカン・エキスプレス クレジットカード 141億ドル
IBM コンピューター 123億ドル
ウォルマート・ストアーズ 小売り 58億ドル

英語の報告書の翻訳版(日本語版)

先日、バフェットが過去に保有・運用していた株式ポートフォリオの英語の報告書を日本語に翻訳したものを見ました。そこに毎年顔を出している銘柄が3つありました。ワシントン・ポスト、コカ・コーラ、ジレットです。新聞社であるワシントンポストは1973年から、コカ・コーラは1988年から、カミソリのジレット社は1991年から常連になっています。ほかにもいくつかありますが、バフェットは、こういった銘柄を長期にわたって保有しています。そして、成功し続けているのです。

株価が割安な銘柄

バフェットの投資手法を簡単に言えば、投資しようとする企業(銘柄)の価値を見定めて、その評価よりも株価が割安ならば買うという方法です。そして、評価する価値よりも株価が割高にならない限り、保有し続けるのです。

利益を伸ばし続ける企業

長期保有しながら成功を続けているということは、投資先の企業は、ほぼ割安圏にいながらきちんと利益を伸ばし続けているということになります。彼の手法をお手本にして、株式投資で成功しようとすれば、成長株への長期投資ということになるでしょう。

成長株と割安株

このように表現すると、株式投資について知識のある方のなかには、疑問を持たれる方がいるかもしれません。ここまでの話では、バフェットは成長株ではなくて、割安株を買っていると受け取れます。普通、成長株と割安株は対峙するものと見なされているからです。

両方の条件を備えた銘柄

しかし、バフェットは、ただ割安な銘柄を選んで買っているわけではないのです。やはり、長期的に平均以上の利益成長が見込める銘柄を買っています。長期的に成長すると考えられる銘柄でありながら、まだ自分の考えるまでには株式市場で評価されていない銘柄を買うのです。その意味では、成長株と言ったほうがしっくりくるのではないでしょうか。

有望な銘柄の発掘方法

では、割安な成長株をどうやって見つけたらよいのでしょうか。株価が割安か割高かの見分け方を論じるとなると、かなり複雑な話になりそうです。そこで、成長を持続できるかどうかにポイントを置いて考えてみたいと思います。

パナソニック株を50年保有したら41億円

株式投資の成功例として、ある銘柄に何十年か前に投資をして現在まで保有したとすると、元手が何十倍になっているという資料をよく目にします。たとえば、パナソニック(旧松下電器産業)の株式を、1949年の公開時に95円(額面50円)で1000株、金額にすると9万5000円で買って、そのまま保有していたら、50年後の1999には41億円になっていた、というようなケースです。

株式投資の素晴らしさ

パナソニックの例は、株式投資の素晴らしさを端的に表しています。しかし、50年前に、現在のパナソニックを予想できた方がはたして何人いたでしょうか。誰も、投資する企業がずっと成長し続けるかどうかを、何十年も前から知ることはできないのが現実です。

利益の成長予想が平均的な企業より高い

その意味では、成長株の発掘は簡単ではありませんが、やはり基本的には企業業績をべースにして、売上げと利益の成長予想が平均的な企業よりも高い企業のなかから見つけることになります。業績を伸ばして企業価値を長期にわたって高めることができる企業が成長企業にほかならないからです。

会社四季報や日経会社情報

有望銘柄の発掘は、会社四季報、日経会社情報や企業アナリストの調査レポートなどを利用するのが近道だと思います。こういった資料は、目をつけた会社が予想どおり業績を順調に伸ばしているかどうかを確認できる資料にもなります。

バークシャー・ハサウェイ

バフェットの投資活動の母体となるのが、投資会社のバークシャー・ハサウェイです。 バークシャーは、アメリカ中西部ネブラスカ州のオマハにあります。 本社は、賃貸ビルの1フロアを借りただけの実に質素なものです。 本社従業員はわずか20人程度です。

机の上にはパソコンでなく電話

昔ながらのつつましいバフェットの執務室には、 ブルームバーグのような情報端末がありません。 インターネットにつながるパソコンさえ置いてません。 ただ机の端に、何の変哲もない電話が置かれているだけです。 このことから、バフェットが日々の株価に一喜一憂するような生活を送ってないことが分かります。

永続するビジネスの手がかり

バフェットは朝起きると、ウォール・ストリート・ジャーナルやフィナンシャル・タイムズなどの新聞に目を通します。 さらに、業界誌を読むこともあります。 「明日の相場がどうなるか」でなく、永続するビジネスの手がかりを得るためだといいます。

バフェットの特徴や魅力

長期間にわたって勝ち続ける

企業の成長をじっくり待つバフェットの姿勢は、短期的な利益を優先しがちな投資ファンドとは一線を画す。「自分が理解出来ない企業には投資しない」などの投資原則をもとに安定して高い運用成績をおさめ、世界各国の投資家の尊敬を集めている。

人柄

飾らない人柄に対する信奉は厚い。米経済誌フォーブスが発表した2015年の世界長者番付では、保有資産727億ドル(約8兆7000億円)で3位となったが、遺産は「99%を寄付する」と公言。1958年に約3万ドルで購入した自宅に今も住む。

哲学がある

特に個人投資家から尊敬されるのは、その投資哲学にある。複雑な運用手法を使いこなすのではなく、企業の本質的な価値を見極め、割安株に長期集中投資する。投資先企業が成長する限りは持ち続ける。

よく分からない会社には投資しない

「事業の内容を自分が理解できない会社には投資しない」が原則。アップルやグーグルなどは「すばらしい企業」としながらも投資の対象とせず、ハイテク企業ではIBMに大量投資する。「経営の道を誤る可能性が低い」からだ。1990年代のIT企業への投資ブームには距離を置き、ITバブル崩壊で投資眼の確かさが注目された。

救世主

過去の金融危機では「救世主」のように登場することも多かった。1991年、米大手証券ソロモン・ブラザーズが国債不正入札事件で経営危機に陥った際には、大株主の立場から臨時の会長を務め、経営を立て直した。1998年に米大手ヘッジファンドが破綻した時も、米連邦準備制度理事会(FRB)から引受先として期待され、2008年のリーマン・ショック後には米金融大手ゴールドマン・サックスなどへの投資を決めた。

コングロマリット

自ら愛飲する炭酸飲料コカ・コーラにも投資する。バークシャーは、IBM、金融大手ウェルズ・ファーゴなどへの株式投資のほか、保険やエネルギー事業も抱えるコングロマリット(複合企業)に成長した。時価総額は約3500億ドル(約42兆円)で、エクソンモービルなどとともに米国トップ5に入る。

プロフィール

1930年、米ネブラスカ州オマハ生まれ。株ブローカーの父の影響もあり、11歳で株式投資を始めた。10代半ばで始めた新聞配達の仕事で稼いだ資金を投資にあてたことで知られる。東日本大震災後の2011年11月に来日。傘下企業が買収した超硬切削工具メーカー「タンガロイ」(福島県いわき市)の新工場完成式典に出席した。

バフェット式とスナップアップ式投資~Q&A

ROEが高ければよいの?

ウォーレン・バフェット氏は自己資本利益率(ROE)、株価純資産倍率(PBR)などを重視していると言われている。しかし、それだけではない。その企業の経営の理念がしっかりしていることを重視している。単純にROEで見るのではなく、「利益率が高く、自己資本比率の高い企業」という観点で見た方がよいだろう。この点は、スナップアップ投資顧問の姿勢にも似たようなポリシーを感じる。

例えば、自己資本が10億円、負債が90億円、合わせて100億円を使って5億円の利益を上げた企業と、自己資本が90億円、負債が10億円で5億円の利益を上げた企業とでは、ROEは前者の方が高い。ROEが高い企業が「良い企業」ということであれば、前者の方が「良い企業」ということになるが、これには少し違和感がある。

自己資本比率が高く(負債が少なく)ROEが高い企業

ROEが高くても借金(負債)が多いと負債の条件が変更になった場合(負債の担保価値が下がるなど)には、急激に利益が減少する可能性もある。当然と言えば当然だが、自己資本比率が高く(負債が少なく)ROEが高い企業の方が安全だ。

負債してまで成長する企業

ただ、逆に言えば、負債が少なくROEが低い企業は成長性がない企業とも言える。つまり、「負債をしてまでする投資案件=収益案件に乏しい」ということだ。負債が多くROEが高い企業と負債が少なくROEが低い企業とを比べた場合に、どちらが効率的かという点に関しては、ケース・バイ・ケースだろう。この点においても、スナップアップ投資顧問との共通点を見いだすことができる。

長期投資が基本のバフェット。個人投資家からすると、長期投資と短期投資はどちらが有利?

長期投資のデメリットは、社会構造自体の変化についていけてない企業に投資をしてしまうこと、つまり、成長が鈍化したビジネスモデルに固執している企業などに投資をしてしまった場合などが挙げられる。メリットは、大きな経済の流れを見ている企業に投資をしていれば、世界経済の拡大規模程度の会社の価値の上昇が見込め、目先的な株価の振れ以上に大きな収益機会がある。

短期投資のデメリット

短期投資のデメリットは、目先的な需給要因などに振り回されて企業の本質、方向性が正しくても投資に失敗してしまうことで、メリットは目先的な企業の変化に敏感についていけるということだ。

この点を押さえて、自分に合った投資スタイルをしっかり分析して投資することが一番大事だろう。

バフェットの言うバリュー投資とは、株価が安ければいいということ?

「企業本来の価値よりも下回る株価の時に買う=ただ、安ければいい」という問題ではない。あくまでも「長期投資」の観点で割安か割高かを見るべきだ。つまり、将来のその企業の予測される株価が安全資産とされる預金や債券などに比べて割安なのか割高なのかを見なければならない。しっかりとその企業の将来を予測していかなければならず、厳密な意味でのバリュー投資というのは難しいと思う。

実際のところ、1時間先、1分先でも分からないのだから、将来の株価を予測して割安かどうかを判断することは難しい。例えば、PBRで割安な銘柄があるとしよう。将来、デフレが進まず、その企業の資産が目減りする可能性が低い場合には、PBRが変化しなくても資産の上昇に合わせて株価が上昇する可能性がある。また、資産の上昇がインフレ率=安全資産の利率だと考えれば、PBRが変化しない場合には安全資産並みの収益が期待できるといえよう。つまり、PBRが割安な銘柄はPBRが上昇した場合には、プラスアルファの収益を得ることができるということだ。

株主優待や配当でも「バリュー投資」

また、株主優待や配当などでも、利回り計算をすることで、個人にとっては「バリュー投資」となる可能性がある。例えば、株価が800円(100株単位)の百貨店の株主優待として「百貨店での買い物10%引きの1年間有効カード」がもらえる場合は、その投資家がその百貨店で毎年10万円の買い物をするのであれば、1万円分だけ得をする。つまり、収益が出たことになる。

8万円の投資で1万円であれば年率12・5%だ。現在の1年物の定期預金よりはるかに高く、株価の下がる可能性を仮にゼロとすれば、かなり割安=その株の価値が割安とされているということが分かる。実際には下落リスクなどを勘案しなければならないが、PBRがかなり低いと下落リスクも低いと考えられる。

分散するより、銘柄を絞って投資する方がよいの?

バフェット氏は成長性のある企業に集中して投資すること、成長性ある企業を選ぶプロセスを重要視していると言える。

集中して投資する方が効率はよいに決まっているが、成長性のある企業をピンポイントで見つけ出すのは至難の業だろう。もちろん、相対的ではなく絶対的な割安感が一番大きな銘柄を見つけられればベストだが、実際には難しい。ただ、大きな流れの中でさまざまな条件を満たす企業や投資の方向性を満たす企業は、いくつかピックアップできると思われる。そうすれば、確かに自分の思惑通りの企業が、いくつか見つかるはずだ。

数銘柄に分散

一つの銘柄に集中投資した場合、その企業がたまたま思惑から外れてしまう可能性もあるので、そのリスクをヘッジするために、少なくとも(もちろん多すぎると問題だが)数銘柄に分散した方がよいと考える。成長性のある企業を選ぶプロセスが大切だとバフェット氏も言っている。そのプロセスの中で絞られた企業は、1つとは限らないだろう。できれば数銘柄に投資をすれば、そのプロセスが間違っていなければ集中しても分散しても、たまたま突出する銘柄に当たった場合を除けば、大きな違いはない。